具合→通常

寝て起きると暑かった。体の調子は戻っていた。
バイトに向かい早速コーヒーをがぶ飲みする。おとといからなにやら近辺の子供会的なものが親子映画鑑賞会的なものを当館において行なっていて夜信じられないぐらいの人々が我先にと押し寄せるが、しきりは全てその子供会的な団体の人達がやってくれるので僕達は余裕でサラリーマン金太郎を読んでいられるのであった。サラリータイム中にふと子供会のおばちゃん達の汚い、古い、そのくせレンタル料が高い(親子映画鑑賞会は映画館を有料で借りて行なっている)、等の当館を中傷する声が聞こえる。昔だったら腹が立ったり傷ついたりしたかもしんないけど、もはやそんなばばぁの戯言はサラリータイムにおけるすてきなBGMである。エリーゼの何とかである。当然問題はそんなところになかったのだ。しかし。
映画終了後、俺は大人数が帰った後なので一応トイレをチェックだけしに行くつもりだったのだが、そこで異臭に気づいてしまうのである、いや気づいちまったんだよなあ、ほんと。

…シルクハットの怪紳士「あれ、なぜだ、なぜお前が表にでておるのだ、おい?早く家にお帰りなさい、お父さんやお母さんも心配しているだろう、何?家のことなど何も心配することはないよ。今夜の夕食は君の好きな焼き魚だよきっと、ほら、お帰り、ほら。そうでもしなければおじさんが君をさらって食べてしまうぞ、いひひ、おじさんはなぁ〜、夜になるといけないことになってしまうんだぞ、わかるか?うふふ、そうならないうちに帰るんだぁ〜!ばぁぁ〜。ばぁぁぁぁ〜。………??う?き、きた?きたか?く、くるのか?は、はやいぞー!今日は早いぞぉぉぉぉー!!待ってくれー!ま、まってくれ!ま、まってぇぇ!ぇぇぇげえぇ、みゃみゃみゃ、みゃって、みゃって、みゃってぺそ、うっ!う、うわぁぁ、うわわ、うわぁぁぁぁぁぁ!!うぎゃぁぁぁぁぁ〜!!!」
静かにひぐらしが鳴き始めた。もう何年も前から使われなくなった納屋の半分崩れ落ちた屋根は夕焼けに染まり鳥達は今夜の寝床を探して何処かに向かって飛び立っていくのだった。…


MONKSのCOMPLICATIONが頭の中で鳴り出す。MONKSとは、ドイツに駐在していたGIがアメリカに帰りそびれて作ったバンドである。全員ザビエルカット、そしてミニマルビートがステキなちょっと変わった感じのガレージバンドなのでよかったら聴いてみてね、ナゲッツBOXの4枚目にも入ってるよ、そんでそこで彼らがCOMPLICATION!COMPLICATION!と言うんだね。やっかいだー、やっかいだー、ってね。でも彼らのいうやっかいさと俺の置かれたやっかいさは違うんだよなあこれ、だって人々が死に向かいどうのこうの、って言ってるもんね。でも頭から離れない。やっぱやっかいなものこそ違えど、やっかいだー、って思う心はやっぱ同じなんだねえ。やっぱどこの誰でも、やっかいだー、って思っちゃうんでしょうな。
そこでそんな俺は日本人に元来生まれもって具わっている根性というものを使うことにした。勿論サラリーマン金太郎の影響である。
そして約20分後。俺はやってのけた。精神を安定させるため各種用具を使い倒し見事にシットを退治したのである。もはや心身共に疲れ額にびっしょり汗をかいていた。


MONKS 「BLACK MONK TIME」