財政難のきざしが

昨日は友達二人とすっぽんを食った。俺は知らなかったのだが二人の間ではそういう話になっていたらしく期せずして初すっぽんを食うことになったのであった。
場所は浅草。なにやら高級そうな店で、ジーンズにTシャツ、スニーカー姿の兄ちゃんがはいってよいものやら、と少し感じさせる店であった。そしてそんなことを零コンマ何秒間考えている途中にタンクトップにハーフパンツ、サンダル姿の友人が先に入っていった。中に入ると友達は料理帽から金髪が見え隠れするメガネの店員に私たちは三名ですよ、という内容のことを言った。そうするとその料理帽から金髪が見え隠れメガネ店員は入り口から一番近い部屋に僕たちを案内した。部屋にはテーブルが二つあり、その二つのテーブルをついたてみたいので仕切ってるつもりなんだけどしきられてないような感じになっていて既に人がいた。当然その人たちが普通の人達だったらここに書きはしないんだけど書くということはその人たちが普通の人、つまりカタギじゃない人だったんですね。なんかアニキ、奥さん、舎弟、みたいな構成でしたわ。核家族っていうのこれ。ちがわい。そして席に座って、しかも俺は彼らに一番近い席で、密室なんですけどね、メニューを見ているときももう既に頼むものも決まっていたので僕の心はお隣さんのものであって何か妙にドスがきいている声がみるみる僕のお腹をいっぱいにさせたのであった。
そんなこんなで料理がやってきたのだが先の金髪見え隠れ店員がお通しです、とかわけわかんねえこと言い出してそして、ハモです、とかまたわけわからねえことを言って俺らにハモを出した。そこで美味しんぼの熱心な読者であって、手っ取り早くそして安く酔うためにチェーン店居酒屋派である俺ははっとしたぜ。ハモといえば京料理でも使用される高級食材。海原雄山と金上社長の遺恨の原因にもなった食材であって小骨が多いため料理に手間もかかるといううなぎに似た困った生物である。そしてまた白木屋などでお馴染み、お通しとは料理とは別料金でもある困ったシステムなのだ。心配心配。お金が心配。生きて出られるだろうか。しかも俺なんて金借りて食う予定バリバリだから千円しかない。それに加え金ないっつーのに皆が頼んでるからつって調子に乗ってビールなんか頼んじゃってんだぜ。ゲベ。そこで再度メニューを見てハモの値段を確認。一人前………。1500円。うん。思ったより安い。胸をなでおろす。ってここまで心配して安心したのはたぶん俺一人。なんか普段見ない方達と同じ部屋で食事するつってその店の雰囲気にアテられちゃったっすね。しかも頼んでるもの俺らのほうが高かったし。
そしてすっぽんがやってきてすっぱんを食った。すっぽんはうまかった。なんだろ、すっぽんの味ですよ。うまい。結局お隣さんも帰って次にファミリーがやってきて俺らも帰った。

そして今日。
バイト。
やることが無い。夕方から雨が降り出す。灰色の空が永遠に続くような倦怠感を感じさせる。金欠の影と不安が湿気にのって。じわじわと蝕む予感が。