そして…

そして座禅を組んで瞑想していたらそのうち様々な雑念が沸いてきたのであった。
それはこの間、バイトが休みの日のこと、なんだか家にいるといてもたってもいられらいような感じになるので友達に電話をかけて遊びにいこうといって、友達も、そうだね、なんつって、そして30分後、友達が車で迎えにきたのだが、なぜかあまりよく知らない人々(しかも年上、故に敬語)が既に二人のっており、おっ、久しぶり〜、つって、俺も、あ、どうも、なんて、今日はどうしちゃったんだろうと思ったのであった(ちなみにこの二人は話がとても面白い、面白いが自分と接点のないようなタイプの人)。そして結局どこへいったかというと二人の提案でパチンコ屋なのであって、パチンコといえば俺が大学一年生のときに初めてやって数万負けてもう二度とやるか、と誓ったものであってやはりそれ以来やっていなくて当然その日も3千円しかないのも手伝ってパチンコはしなくて、コンビニでアイスを買って食ったりパチンコ屋にあった無料のアメを一個目で飽きてるはずなのに無理やり何個も食ったりおしぼりで無駄に手を拭いたりしていて、それでも俺の友達もパチンコをやんないので二人でまだおわんねえのかよ〜、とか言いながらアメをバリバリ食っていたのでまだ耐えられたのであったが、店内周囲を俳諧してるうち友人はなにかパチンコに興味を持ち出したのであった。そして、俺、やってみる、かなんか言っておもむろに千円札を友達の友達が打っていた台の隣の台にねじ込んでガッチャンガッチャンやりだしたのであったのだが、俺は内心そんな台も適当に選んでしかも2,3千円ばかり打ったところで出るわけがない、そして君も俺と同じでギャンブルに向かない体質なのだしやはり出るわけがないよ、と思っていたが、そんな内心をよそに友達はその強運によって2千円で玉が出始めたのである。俺は正直によかったじゃないか、と思った、しかし、なんだ、友人がパチンコという名の勝負に勝利している中で俺は勝負すらしてないじゃないか、っていうかこれはパチンコじゃなしに現実に今の自分の状況に置き換えてもそっくりそのまま当てはまるじゃないか、とひとり暗い考えを巡らせうなだれていて、これならいっそ今の持ち金3千円全額適当な台、友人と同じく友人の隣の台にでも、つぎ込んでいっそ全てを失ったほうがいいんじゃないのか、そっちのほうがいさぎよいんじゃねえか、と友人がジャラジャラバラバラやってる隣の台をじっとじっと見据えていたのだがそれもつかの間、脇からばばぁが滑り込んできて友人の隣の台に座りおもむろに千円札をねじ込んだのであった。俺は、ああ、いつもこうだ、いつも俺がぼんやりしているうちに物事が進んじまって結局しょうもない立場になったり不本意なことばかりやらされるのだ、そしてそれは全て俺が悪いんだ、人生は早い者勝ちだぜおっかさん、と思っていたのだが、ふとここである賭け、勝負、が成立するんじゃねえか、と考えたんであるのだが、というのもつまり今の俺の全財産三千円以内でばばぁがフィーバーすれば俺の負け、ばばぁが三千円スれば俺の勝ちという、もし俺がこの台を打っていれば…、という仮定のもとに成り立つ三千オアナッシングのひそかな賭けだった。幸い隣では友人が打っているわけだしじっとばばぁの台を見守っていても何の不振もない、そうと決まれば俺は、懸命にそして真剣に祈り、アントニオ猪木という名のパチンコ機、別名もう一人の俺、を応援しはじめたのであった。お願いだ!このばばぁ、いやこの台を打っていたであろう俺に3千円スらせてくれ!そうすれば今こうしている俺は無駄な賭け事をしなくてよかった俺になれる!、と、そして俺はばばぁの台にリーチがかかるたびにヒヤヒヤしたのであった、そして願いが通じたのであろうかばばぁは最初の千円をスり二千円目に突入したのであった。俺は、よし!あと千円だ!がんばれ!猪木!と声に出しそうに、というか、こんなうるせえとこなんだから大声で両手を大きく振りながらエールを送ってもいいんじゃねえかとも思ったのだが友人が驚くかもしれないので、あと、後のフォローも面倒臭いのでやめといた。そして…、結局二千円目も当たりはこなかった。俺はそろそろ勝利を確信しはじめた。やっぱり賭け事はよくない。まじめに働いて得たお金こそ本当のお金です。その証拠にどうでしょう、パチンコで儲けたお金と汗水たらして働いたお金、これ重みが違いますでしょう?あなたも違いがわかりますでしょう!?ねえ!?おばちゃん!?それがわかるならば早く千円を入れなさい!!と俺は心の中で叫び続けるとばばぁにそれが聞こえたのか聞こえないのか小首をかしげると席を立ち彼方に消えていったのだった。
おい!ばばぁ!やい!もう!お、おい!もう千…、もう千円使ってけよ!!
俺の、勝負の結果は闇の彼方に葬られた…。つまり賭けなんてしたことになってないじゃないか…。負けるよりも悪い、まさに最悪ってこういうことを言うんだな…。
その日、結局友達とその友達も大勝して(5万ぐらい勝ってた)友人の友人の提案で焼肉を食いに行くことになった。俺はパチンコに勝った人の提案の焼肉屋なのでてっきりおごりだと思い込んでのこのこついていったのだが、というか帰りようもないのだが、お会計の際にそいつから、ん、じゃあ、一人、三千、いや、2千5百かな、の一言にびっくりしてしまい、さっきの賭けのことなんか全くどうでもよくなり、あ、ああ〜、あんだけ食って2千5百円は安いですねぇ〜、とわけのわからない心にもないことを言って金を払ったのであった。本当にあの日はなんだったのだろうか。わけがわからない。結局一人相撲とはこのことなんだな、結局俺なんぞはお釈迦様の手のひらで転がされている孫悟空ですよ、結局なんやかんや言ってぎゃーぎゃー喚いてみても結局は大きな流れに飲み込まれちまうんですよ、と相撲解説者の物まね(なんだそれ?相撲だけにってか?このボケが!)で一人呟いてみた。そして今となっては焼肉を食っているときに友人の友人から発せられた一言、パチンコも打たないでずっと待ってたんでしょ?休みの日無駄にしちゃったねー、の一言が特に強く印象に残ってます。そのときはおごりだと思い込んでたので、全くそんなことはありませんよ〜、と嘘偽りなく言ったのであったが…。